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毎年、夏になると妻は九州の実家に娘と二人で帰省する。今年も、はしゃぎながら、羽田空港から旅立つ妻と娘を見送り、心なしかしょんぼりしている当家の4歳のオスのコーギー、マリンに声をかけた。「さぁ、マリン、今年はどこへ行こうか?」
マリンからは答えがないので、いつものように STAY WITH DOG を開き、変わった名前の宿を見つけた。「ロッジ・ホ・オポノポノ」。 |
ホームページにあった、雪を頂く白馬の山並みと写真に魅かれ、またホ・オポノポノという言葉が、心の洗浄と癒しというハワイの言葉であることを知って、行きたくなった。仕事や人間関係に悩むことが多くなった。この辺りで、一度自然の中で心の洗浄が必要だろう。 直前であったにもかかわらず、メールの問い合わせに直ぐに返答をいただき、青木湖でのカヌーツーリングのついた宿泊パックを申し込んだ。 すると、2日後にはロッジ・ホ・オポノポノさん(以降、失礼ながらLHOさんと略す)から、予約確認書類でもなく、予約金請求でもなく、白馬のガイドマップの束が速達で送付されて来たのだ。心遣いにはいたく感動させられた。 |
当日、早速ガイドにあったHakuba47で山歩き、川遊びを堪能したあと、白馬岩岳スキー場の近くにあるLHOさんの木立に囲まれた敷地に車を乗り入れた。白い壁と張り出したウッドデッキが特徴的な建物で、写真で見るよりも印象的だった。 にこやかな奥さんに迎えられて、大きな吹抜けの下にあるダイニングでウェルカムティとバナナブレッドをごちそうになった。建物自体は、古い
りで、風呂やトイレが半地下にあったりするが、客室もダイニングもシンプルで、ウッディな雰囲気があり、ひと目で気に入った。 犬にとって、やさしい感触のフローリングは気持ちがいいらしく、宿の中の探検を張り切って済ませたマリンは、何度か仰向けになってくねくねした後、あちこちでゴロ寝をしていた。 |
外にはドッグランがあった。奥さん曰く、あまりいい芝生が手に入らず、植付けがうまくいかなかったようで、茶色の芝が敷き詰められていた。それはそれで、マリンにとっては気持ちがよいようで、ひとしきり走り回り、飛び回った後、またゴロ寝をしていた。
私は同宿の京都から来ていたバーニーズを飼われている方と、ドッグランの茶色いクッションのような芝生の上で、気持ちよさそうに寝ているそれぞれの犬の横に腰を下ろしていた。そして、夕方の涼しい風を感じながら日暮の鳴く中で、ぽつりぽつりと話をして、ゆったりと時間が流れていくのを感じていた。 |
夕食は、カナダのケベック出身のご主人がウッドデッキのグリルで料理する「創作カナダ料理」だった。一見、素朴であるのだが、前菜からデザートまで、すべてとても美味しく、ペンションの雰囲気にも合っているように思った。 それにしても、LHOの給仕は厨房からダイニングを横切ってウッドデッキのグリルとの間を、何往復もしなければならず、「動線」に改善の余地がありそうだ。その動線上にマリンが長い胴体を投げ出して寝転がり、とても邪魔になってしまったと思う。 |
客室にはテレビはないが、高い天井にあるロフトに、何となく大人もわくわくさせられる。バルコニーから入ってくる風は、今年は暑いといわれながらも、涼しかった。 翌朝、カヌーツアーに出かける前にオーナー夫妻と話した。自分たちも犬が好きで、ペンションの床を改装して、犬も泊まれるペンションを始めたら、単にそれだけじゃなく、お客さん同士が犬談義から交流を深めるような場になっているのが、とても嬉しいとのこと。 ホ・オポノポノには個人と家族の心のクリーニングという意味がある。ここに来た客同士が、意識せずにそんな「コミュニティ」を作り上げているように思う。ぜひ、長く続けていただきたいと思う。 |
家に帰ってきた私は、心が洗浄されて元気になったかというと、そうでもない。いつもは、目一杯、一人と一匹旅を楽しむのだが、何故か、妻と娘と一緒に楽しみたかったな、と寂しい思いを感じている。もしかしたら、クリーンな心で家族をとらえるようになったからかもしれない。マリンはというと、疲れて熟睡しながら、足がピクピクと動いているのはLHOのドッグランの夢を見ているのか、青木湖で泳いだときの、犬かきの夢を見ているのだろう。今度は家族全員で再び、白馬とホ・オポノポノを訪れたい。
(2011/8/10泊) (2011/8/15)(神奈川県、A.Fさん) ※4枚目と5枚目の写真は、宿HPより転載。 |