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[特集]冬の信州、美術館と宇宙を感じる旅

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[特集]冬の信州、美術館と宇宙を感じる旅

2012年〜2013年のホワイトシーズン、2度目でかつ最後の雪遊びの旅にでかけました。行き先は信州、諏訪湖周辺。
東京近郊から諏訪湖周辺に向かう場合、普通は中央自動車道を使うものですが、実は自宅からだと関越自動車道から上信越自動車道経由でアクセスするのと、それほど距離はかわらない場合が多いようです。
自宅からインターチェンジまでの一般道の距離の短さや、中央道のように八王子から相模湖周辺の渋滞ポイントが広く、一度詰まるとなかなか解消しないという構造、ストレスの少なさなどから、今回も関越道経由で行く事を選択しました。地図の計算上ではトータル10kmほどしか最初の目的地まで違わないというのもその決定理由です。


2013年3月1日(金) - DAY1

5時起きしてテルモスにコーヒーとハーブティーを入れ、朝食は取らずに出発です。6時に所沢インターから関越に乗り、8時半には東部湯ノ丸ICを降りました。気温は前回よりはるかに高く、氷点下ではありません。しばらく一般道を走り、マクドナルドで簡単に朝食をとり、くーのトイレを済ませて再出発。
道路はトラックが多いですが、遅すぎる車はなく順調でした。路面も凍っていません。白樺湖方面に向けて国道を単調に走り、特に裏道を使わずに車山スキー場の前をかすめつビーナスラインを走ります。途中の道は対面2車線でしたが、中央だけ1.5車線分除雪されているため、すれ違う車が来ると除雪した雪の壁に車を擦りそうでひやひやでした。例年より雪は多いのですが、この日に限って気温は高くなり、予報では春一番が吹くとの事でした。
車山は私が30年近く前に生まれて初めてスキーをした場所でもあったりします。当時は車は4WDなどランドクルーザーぐらいしかなくFRばかり。またタイヤもスタッドレスなどなくスパイクタイヤでした。伊那の友人宅から杖突峠を越えて通ったものです。
今回のテーマは低くても山頂踏破。車山はスキー場があり、リフトの終着点から数分で山頂までいけるという観光地でもあるのですが、車山肩の駐車場からだと片道1時間弱のスノーシューハイクで山頂まで登ることができる山です。そうこうしつつ、雪に埋もれる車山肩の駐車場に9時半前に到着しました。
スノーシューのご紹介 車山高原SKYPARK
ここから霧ヶ峰や八島ヶ原湿原、山本小屋までの縦走コースが歩けるのですが、残念ながら八島ヶ原湿原周辺への犬の立ち入りは禁止されているので、今回は車山肩駐車場と車山山頂とのピストンルートとなります。実際それ以上は今日の天候的にも難しいと思っていました。無理は禁物です。
霧ヶ峰(八島ケ原湿原)への犬連れ規制
駐車場は除雪こそされていますが、車は停め方によっては5〜6台程度が限度という状態でした。既に2台が停まっており、その車が出られるように少し間を置いて停めました。ふと登山ルートをみると、車山山頂へ向かうルートに6〜8人の人影が見えます。しかし車が揺れるほどの突風が吹き荒れていました。
行くか行くまいか悩んだのですが、とりあえず途中で無理だと思ったらすぐに引き返すという事を決めて、行動準備をします。雪の状態からスノーシューをセットして出発です。時間は9時40分。強風が南風といってもまるで耳がちぎれそうな冷たさです。ニット帽を深く被り、手袋をします。今回ストックも用意していましたが、なだらかなコースなので両手をあけるために置いていく事にしました。
突風のため、くーすら顔を背けるほどでしたが、実はこれはまだ序章だったのでした。のぼり始めてすぐ、雪が風で固く締められスノーシューのクランポンがほとんど噛まない雪質になりました。その上私の体重だとところどころ脛まで沈むように一部表層だけが弱くなっている所もありました。コンディションはとても悪いものです。
尾根に出るまでに段々と向かい風が強くなり、また進行方向へ向かって右下はビーナスラインまで急斜面。へたをすると滑落の恐れがある場所を通ります。そこで私が先行してできるだけ踏み固めながら足場を作りながら進みます。
ほんの数10mでしたが危険な場所を無事抜けると、遠く正面に富士山が見えました。空はおどろおどろしい灰色の雲が垂れ込め、風が唸りをあげています。右手に甲斐駒ヶ岳などの南アルプス、左手には八ヶ岳を望める絶景なのですが、それを楽しむ余裕はあまりありません。ルートに沿って張られているロープも雪に埋まり、先行されていた方のトレースも、吹きつける風で消えかかっています。
事前にルートは調べていてわかっているのですが、風向きはその時によって変わります。途中から頂上に向けて左手に折れてのぼっていく所で、追い風に切り替わりました。少しだけ楽になりますが、今度は山頂のレーダードームが見え、右手に少し折れるポイントでこれまで以上に風を強く感じ、一旦露出している岩の影にしゃがんで様子をみる事にしました。
ここで引き返すか悩みましたが、このあと午後にかけてもっと風が強まる予報だということと、下山ルートは眼下に見えるこの尾根より低い位置になるので何とか山頂に向おうと前進します。くーと飼い主が風で飛ばされそうになりながら何とか10時30分に山頂レーダーの建物に到着。建物の影の風の弱い所で休憩させますが、妻は短時間の工程でしたが相当疲れています。ポットのお茶を飲んで体力を回復してもらっている間に、調査のためスキー場のリフトの方を見に行きますが、より風を強く感じ諦めました。
下山ルートを予定通りの車山肩駐車場方面に決めたあと、簡単にくーと山頂での撮影だけして、下山ルートへのアプローチを確認し、一気に下るべくそちらへ妻とくーを誘導しました。既に目的地でもある車を停めた車山肩駐車場は目視できており、間違える事はありません。尾根から離れた事で、風はいくぶん先程より弱くなっています。
周辺には先行していた登山者の姿はもう見えません。下山した気配もないので、先に進んだのでしょう。私たちはわずかに遊歩道の柵の頭が見えている所まで来ると、駐車場方向からなんとこれから登ろうとしている8人ぐらいの団体と3人ぐらいの親子連れが確認できました。前者は隊列を組んでとてもゆっくりと向かい風に向い、まさにさきほど私たちが通ったルートを登っていきますが、後者はすぐに引き返していきました。この風の中に登っていく人たちは、やはり装備と経験がある人たちなんだろうと思いました。
15分ほど下り、ほぼ安全な場所まで降りてきたあたりで振り返ってみると、先程の団体はほとんど進んでいませんでした。私たちが車に戻ってやっと一息ついた時に見上げると、今度は彼らは最も風が強かった場所を越え、山頂近くの尾根筋まで登っているのが見えました。車までもう少しという所までくると、妻の元気も戻ってきました。
ほとんど撮影する余裕がなかった今回の軽登山ですが、冬期は油断を許しません。それが南風であっても同じで、いつでも引き返せる気持ちと、戻れるルートの確保を忘れてはならないと、あらためて思いました。
車に戻ったのは11時半。登山開始から2時間しか経っていないにもかかわらず、とても長く感じました。装備を片づけて一息つくと、くーももう疲れたという顔をして、助手席でまるまっています。既に戦意喪失した飼い主は、とりあえず冷えた体をほぐしにいこうと、温泉に向う事にしました。ビーナスラインを下山です。
霧ヶ峰を抜けて下諏訪駅前を抜け、諏訪湖畔に建つ目当ての片倉館に到着したのは11時半すぎでした。ここはバイクツーリングや車でのキャンプの時に何度か立ち寄った場所で、昭和の初期に建設された国の重要文化財指定でもある温泉です。玄関から脱衣所、浴室まで全てに歴史を感じます。
上諏訪温泉片倉館
ここの浴槽は特徴があって立って入るほど深い浴槽です。そして底に敷きつめられた砂利は、足の裏を刺激します。この感触を楽しみながら、雪山でかいた汗を流しました。目の前の風景はリアル・テルマエ・ロマエです。湯からあがったあと2階の休憩室を少し見学してから外に出ました。
せっかくなので、車で待機していたくーをあらためて入口前に連れてきて記念撮影。雪の残る敷地でくーを散歩させていると、午後からの雨の予報がもう降り始めてきました。
まだ本降りではない事もあり、せっかくなので諏訪湖畔までいき、くーの記念撮影。今年は冷えているはずですが御神渡はできておらず、目の前の湖面は青々としていました。
車に戻る頃には雨はすっかり本降りに。13時半をまわっているので昼食先を探します。いろいろお店がある諏訪ICの方に一旦向かいますが、工事中が多くところどころ渋滞しています。個人的にはおいしいハンバーグが食べたかったのですが、そこに行く途中で回転寿司があったのでそこに決定。
くーと一緒に旅をしていると、回転寿司を見つけるとよく使います。並んでさえいなければ、食べたいだけ食べてさっさと出て来られ、くーを待たせる時間が短くて済む上、飼い主としても満足度が高いからです。
手軽に食事を済ませ、妻のリクエストで一旦諏訪湖に戻ります。その理由は片倉館で見つけたチラシの中に、原田泰治美術館がありという事を知ったからでした。是非寄りたいというので、時間もあるので行ってみる事にしますが、到着してみるとなんと駐車場には本日閉館の看板が。どうも明日からの特別展のために、昨日今日と展示の入れ替えで臨時休館のようでした。妻はとても残念がっていました。
諏訪市博物館
博物館は立派な建物で、御柱祭の歴史や発掘された土器や遺跡、そして企画展として「諏訪のおひなさま」というタイトルで古今雛や諏訪神社神官や高島藩士などの家に伝わった江戸時代から近現代の雛人形が展示されていました。私はちょっと人形は怖い感じがするので苦手なのですが、雛人形の歴史は日本の歴史の中でもなかなか深いようです。勉強になります。
訪湖周辺に発達した文化の痕跡を学んだあと、雨足が弱まらない中、車に戻りました。くーは助手席でまるまっています。時間もそろそろなので宿に向かう事にしました。今日の宿は原村のペンションビレッジ内にあるので、下道でおよそ30kmほどの距離をゆっくり移動します。
ペンション村にはすぐ着いたのですが、宿泊場所であるワンズワースさんが見つけられず、ぐるぐると迷ってしまいました。実際はとてもわかりやすい所にあったのですが、なぜか先入観から違う場所を探していたのが原因です。初めての宿はこういう事もありますが、それはそれで楽しいものです。これで日が暮れていたら焦っていた事でしょう。なんとか明るいうちに宿に到着できました。
今宵の宿泊はワンズワースさん。英国の空気漂うペンションです。
ワンズワース


2013年3月2日(土) - DAY2

昨日の大雨が嘘のように晴れ渡り、気温も一気に放射冷却で冷え込んだ冬晴れの朝。ゆっくりと英国風の朝食タイムを過ごし、9時半に宿を出発します。結局妻は原田泰治美術館をどうしても見たいというので、もう一度諏訪湖畔に向う事にしました。
美術館は10時からです。本当は諏訪南ICから諏訪ICまで一区間中央道に乗ろうと思ったのですが、アプローチを間違えてしまい、下道で行く事になってしまいました。地元より高いガソリン代のエリアなので、今のうちに少し補給しておこうと寄り道しつつ、10時10分に原田泰治博物館に到着。くーには観賞中、また車で留守番をしてもらいます。
諏訪市原田泰治美術館
ちょうど私たちが訪れる2日前までは、「原田泰治と行く ぶらりローカル線の旅」という企画展が行われていたようですが、今日からは「原田泰治の信州紀行 これからの10年はふるさとのために」というものに変わっていました。独特のタッチで描かれる風景と人影は、やわらかく強い印象を与えてくれます。原田さんは諏訪出身のようで、ここに美術館を建てられたようでした。
もともと美術系の出身の妻は画集を1冊持っており、好きな作家さんのようです。原画サイズの大きさやタッチ、絵の具の変化などを楽しんで観賞していました。私も身近な風景が作品の題材なので、1時間半ほどをかけて見てまわりました。土曜という事もあってか、開館間もない時間でもお客さんは結構入っていました。ほとんどが女性です。
売店で1冊画集を記念に購入。外は諏訪湖が美しい美術館でした。時間があれば2Fのカフェでお茶でもしたい所でした。
このあとの予定もあるので、撤収して一気に次の目的地へ向います。諏訪湖畔から有料の新和田トンネルを抜けて一気に長和町を通過、佐久方面へ向います。目的地をナビ設定していたのですが、運転途中でどうもアプローチがおかしい事に気がつきました。このままだとはるか手前で案内が終わってしまいそうです。
一旦路肩に駐車し、目的地を紹介するウェブサイトをiPhoneで確認。そこへの地図は簡易のものしかないので、幹線道路からの入り口部分を経由地にして、あとはもうナビを無視する事にしました。それだけ案内ができないような山奥の1本の細い道の先でした。
設定した経由地は小海線の臼田駅近く。下小田切の交差点周辺です。田舎道に入ると、予想通りナビはまったく使い物になりませんでした。曲がり角ごとにUターンさせようとします。仕方なく一旦案内を停めて、道の左右を見ながら看板を注意深くチェックしながら進む事にしました。
すぐに道はほぼ1車線になり、民家の間をぎりぎり抜けていきます。次に畑が現れ、それを越えると人気のない谷間をくねくねと抜ける山道になっていきます。この道であっているのか不安になった頃、大きな看板が現れました。間違っていなかったようで、ほっとします。ここから9kmほど先のようです。
その先に進むと路面は一部きれいに舗装されていました。安心というかちょっと拍子抜けもしていた所、途中から砂利道になったりと、真新しい舗装の状況をみると、今後きれいに整備されていくのかもしれません。予算が厳しい宇宙開発、もっと日本の未来をかけてしっかりとお金をかけるべき所はかけてほしいものです。
道路は雪と氷で閉ざされているかと思いきや、ちゃんと除雪がされ気温の上昇でほぼドライでした。一部アイスバーンが残っていたりと、時期に入るのであればスタッドレスは必須、できれば4WDがいいでしょう。途中1台だけハイエースとすれ違いました。施設の人たちでしょうか。
途中7kmという看板とともに交差する道があったのですが、看板が紛らわしくどちらに進んでいいかわからなくなります。とりあえず道なりに進みますが、しばらく看板が現れず心配になりました。あと4kmの看板をみつけてほっとしました。
そして進行方向、森の向こうに突如現れた巨大なパラボラアンテナ。思わず声をあげてしまいました。ここはあの「はやぶさ」を探しあて、姿勢制御やサンプリングの動作をさせるためのコマンドを送ったアンテナなのです。
臼田宇宙空間観測所
施設への入り口には受付の窓口があり、中に係の方がいました。車を停めて近寄ると、窓を開けて名簿に記入するように言われます。そこに住所と名前と車番を書き、見学施設へ入館用のシールバッチを渡されました。他に見学者は誰もおらず、駐車場も一部しか除雪されていません。大きなパラボラアンテナはほぼ真上を向いており、今まさに宇宙ヨット、イカロスと通信しているのかもしれません。
くーはこの駐車場までは入れますが、見学施設の中には入る事ができません。ちょっとだけ散歩のつもりで施設内を歩いてもらい、記念撮影をしました。くーにとっては退屈な時間な上に、またも車で待機になるので不満気です。おやつをあげて機嫌をとり、飼い主は見学タイムとなりました。
敷地はあまり広大ではなく、駐車スペースからアンテナを挟んで反対側に、職員の事務所棟があるのが見えます。ここと筑波や相模原のJAXAの施設が繋がれ、そして宇宙の先にあるとても小さな衛星と通信を行っているという事を考えると、とてもワクワクしてきます。
見学棟は職員の事務所棟よりはるかに小さいのですが、中にはいろいろな見どころが詰まっていて、はやぶさやこれまでのロケット、衛星の模型、観測の歴史をはじめ、10数分〜30分ほどの紹介映像をビデオコーナーで観賞できるようになっていました。時間があればゆっくりここで楽しめたのですが、ちょっと今日は夜に用事があるため、ビデオ以外をみさせてもらいました。
1時間ほど滞在して、やってきた山道を一気に戻ります。風が強いのですが日差しは暖かです。R141とR142を経由し、最短距離で佐久南ICから中部横断自動車道の無料区間に乗り、上信越自動車道に入ります。佐久平をすぎトンネルが連続するあたりから、軽井沢周辺の山間部を越え、松井田妙義ICのあたりまでカーブとアップダウンがきつく、車の量も増え、おまけに突風のために緊張しながらの走行です。一気に関越道のジャンクションへ向けて走ります。
ららん藤岡
昼食を横川SAあたりで取ろうと思っていたのですが、ちょっと我慢して以前利用して気に入った藤岡インターに併設されたハイウェイオアシスに立ち寄りました。海鮮丼と鮭親子丼の遅い昼食をとり、満腹で眠くなりましたが、一気に関越で所沢ICまで走ります。
いつものように自宅近くでいつも利用する洗車機でどろどろになった車を洗い、同時に少し値上がりしているガソリンを満タンにしてから17時すぎに帰り着きました。突風で庭の植木鉢がひっくり帰っていました。
昔の学生時代のように、旅は前日に思い立ってでかけるというようにはいかず、仕事の調整や宿の予約を事前にしなければなりません。今回は雪遊びに行くにもかかわらず、春一番が吹く上に、大雨が降るという予報が出発前にわかっていただけに、雪遊びだけではなく他のイベントも入れようと割り切っていました。
その分博物館や美術館や、最近興味を持っている宇宙科学に接する事ができるようなテーマの旅にしてみたのでした。これはこれで結構楽しめたと思っています。
車山登山での悪天候は正直ちょっと危険も感じましたが、自然と接すること、自然の中で遊ばせてもらっている生き物の立場としては、リスクは当然あるものです。そこに立ち入る事で自然への与えるインパクトを最小限に抑えるのはマナーレベルですが、同時にその自然を甘くみる事なく、謙虚な気持ちと慎重な行動で楽しむべきだと、あらためて思わされる旅でした。
雪遊びはまた来シーズン。そろそろスタッドレスも夏タイヤに交換です。
(Travel date : 2013年3月)
(2013/3/26掲載)
(東京都、Yさん  くーたら日記 Hill Breeze)

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