北海道で犬連れ客をメインとした宿はとても少ないと思います。私たちが唯一といえる、ゲストハウス ラーダニーヴァをネットで見つけ、北海道の最終日を離れる前日に泊まろうと決めていました。場所は十勝清水といって、まさに道東と札幌方面を結ぶ主要ルート、日勝峠の麓にある町です。清水町はちょっとした町ですが、それほど大きな町でもありません。しかし鉄道が通っているので、まだ古き北海道の雰囲気が残っている町でもあります。宿がある周辺には、道東自動車道のインターがあるだけで、周囲には何もないといってもいい立地でした。牧草地が隣接し、木々に囲まれてヨーロッパ調の低い白壁の建物が道路脇から見えました。ゲストハウスというと、インドやネパールによくある、どちらかというと寝るだけのようなイメージを持っていたのですが、見た目は木々に囲まれてなかなか欧風の静かな佇まいという感じです。今日の宿泊者は私たちだけ。広々とした玄関も二重扉になっていて、犬の足洗い場もひろく、使いやすそうに作られていました。ロビーはダイニングと直接繋がっていて、そこにはラーダちゃんという猫が置物のように寝ています。くーは苦手な猫がいて、いきなり警戒モードに入ってしまいましたが、宿主の奥さんが出迎えてくださるとくーはしっぽを振って大喜び。部屋にはそれぞれ出入りできるテラスがついていて、そこからも外の広々とした牧草地へ出入りする事ができます。部屋の中の装備は思いの外コンパクトで、シングルベッドが2つにユニットバス・トイレがあり、小さなテーブルと椅子のセットが1つに、小さいテレビがありました。シーツやカーテンもかわいらしく、統一されたものが使われていて、窓からは目の前の牧草地が広がっているのが見えます。夕食まであと30分ほどあったので、外にある露天風呂に食事前に入らないかと言われました。犬も一緒に連れていってよいとの事で、喜んでお風呂に出発。玄関の先にある丘を少し登ったあたりに、お洒落な白壁の門があって、その先に手作りのウッドデッキがあるお風呂が見えました。横には門と同じデザインの脱衣所もあります。くーを湯船の横に繋ぎ、私達は総木 りの湯船につかります。そこからは遠くに道路が見えますが、向こう側からこちらは見えない距離があり安心です。目の前には広々とした牧草地を見下ろす感じで、広大な風景が広がっていました。夕陽は雲が多いので無理でしたが、晴れていたらとても美しい風景だった事でしょう。体が暖まったあとにすぐに夕食になりました。ボリュームと味はすごいもので、とても豪華なメニューに驚きました。焼き蟹の足、サラダ、刺身、じっくりと煮込まれて濃厚なビーフシチューなど。できたてで皆おいしいくおかわりまでしてしまい、食べ過ぎてしまいました。食事の合間に追加のおかずを出して下さる宿主さんは、その都度くーを撫でながら色々な話をしてくださいました。くーは足元でフンフンと落ち着かない様子。ラーダちゃんがたまに通過するのを見つけるとグーと唸り、逆にラーダちゃんはくーを気にせず優雅に立ち去っていきます。この宿ができた経緯、前に住んでいた場所、ペット連れの宿としてのご自身のポリシーなど、どれも深くうなずきながら、今のこの快適な宿のできるまでを知りました。ただ、最近ずっと共にしてきた愛犬を老衰で亡くされ、その計り知れない悲しい出来事を聴いた時、このご夫婦は本当に犬との生活の為に、北海道にやってこられ、この宿を自分たちなりの桃源郷のようなイメージを持って、手作りで作ってこられたのだなと伝わってきました。ダイニングのテーブルには、これまで宿泊した客の写真が沢山、バスケットの中に入っていました。これまでにもたくさんのお客さんが泊まっていったようです。また椅子や木製の犬や猫の小物は全てご主人のハンドメイドだそうです。この十勝清水という場所で、ペット連れの宿を運営しているというのは、正直な所失礼なのですが採算が取れるのだろうかと思っていました。実際の宿泊客の多くは道民ではなく、内地からの旅行者が多く利用しているらしく、まだ室内飼いというスタイルが少ない北海道ですが、これから前向きなペットも一緒に泊まれる宿のお手本の一つになれば嬉しいと思いました。満腹で逆に苦しさを感じながら、翌朝までぐっすり眠れました。朝からくーは目の前の牧草地で大暴れ。思う存分走っても半分も使えない広大な草原で、くーは朝ディスクを楽しむ。私達はそれに一通り付き合ったあと、朝からまたボリュームのすごい食事を頂きました。焼きたてのクロワッサンもおいしく、おだやかにダイニングの大きい窓から差し込む朝陽にまどろみながら、北海道最終日の朝を堪能しました。朝食後オーナーさんと会話の後、チェックアウト。最後に頂いたご主人手書き絵はがきには、愛犬への愛情がいっぱい感じらる暖かい姿が描かれていました。心温まったお宿でした。(2005/10/11掲載)(東京都、Yさん くーたら日記 Hill Breeze)
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