2月9日(火)
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30年ちょっと前に、私は初めて北海道をオートバイで走りました。一人旅です。テントや炊事道具一式を後ろにくくりつけ、3週間程度の大雑把な予定しかない旅。キャンプをしたり、無人駅に泊まったりしながらの貧乏旅でした。
そんな中、雨の日や疲れがたまった日には、宿に泊まる事もありました。とはいっても20歳の頃は普通のホテルに泊まれる経済力がありません。そんなお金があれば、少しでも長く旅を続けたいと思うほど。でも宿をとらなければならない状況に陥った時に心強いのは、ユースホステルやライダーハウス、旅人宿でした。
阿寒湖のほど近く、当時はまだ秘境と言われていたオンネトーという湖があります。キャンプ場もあるのですが、その時はちょっと体調が悪かったんだと記憶しています。この雌阿寒温泉というすばらしい温泉が沸く場所には数軒の宿があり、その中のユースホステルに宿泊しました。その時にこのすばらしい温泉に入ってからというものの、日帰りですが毎年のように利用するようになりました。
今では温泉宿として営業しているのは1軒を残すばかりになってしまったのですが、そのユースを経営していたのがまさに今回の宿、野中温泉さんでした。そこが犬連れ宿泊ができると知って今回連絡をした所、冬期は原則週末営業のみでしたが開けてくださると言われ、予約を入れさせていただきました。
オンネトーエリアは冬、スノーシュートレックに最適な場所です。雌阿寒温泉からオンネトーまでの車道は冬期閉鎖になりますが、ここをスノーシューを履いて森の中を下り、完全結氷したオンネトー上を抜け、キャンプ場でランチをとり、オンネトー湯の滝までという行程を往復をした事があります。また雪のない夏の終わりに、先代犬くーとオンネトー湯の滝まで往復の散歩もしました。 |
オンネトーまでの往復を終え、汗だくになった体でチェックインしました。女将さんが迎えてくださり、犬連れ宿泊用に2階の部屋を案内していただきました。
そこは独立した部屋で、トイレと洗面所がすぐ部屋の前にある静かな和室でした。ちょっとしたベランダもありましたが雪でサッシが重く、ちょっとだけ開けてみましたが、外に出る事はありませんでした。 |
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部屋にはトイレシーツなどのアメニティも一式あり、大きいサークルが既設されていてその中を利用できるようになっています。畳部屋なので爪はちゃんと切っておかないと迷惑になるでしょう。いつもの落ち着くクレートはサークルの中に入れずに飼い主の近くに置きます。 |
テレビも問題なくきれいに映りますし、大きなテーブルはお茶セットが乗っていますがあまり出番はなさそうです。お布団は押し入れに入っていて、これを寝る時は敷く事になります。 |
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まずはクレートの中にめいを待機させて、夕食前に何はなくとも温泉へ行きます。日が暮れる直前ですが、こちらには木づくりの内風呂と石づくりの露天があり、どちらも貸し切りで使用できました。露天は女湯とほとんど繋がっているようなものですが、暗い時間ならゆっくりできます。 |
最高の温泉でしっかり暖まって部屋に戻り、内線電話で夕食をお願いすると、ほどなく女将さんが部屋に旅館の定番のような懐かしいメニューの夕食を持ってきてくださいました。充分に満腹になる量で、これをいただいたあとは静かな山の中のリラックスタイムです。 |
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寝る前にめいの排泄にと外に出ると、看板猫のちゃーちゃんとご対面。めいは猫が大好きなのですが、ちゃーちゃんは宿の犬猫の中では頂点に君臨する存在です。動じませんが、かまってほしいめいから少し逃げがちでした。 |
こちらには他に看板犬のモコくん、チロルくんが居て、猫ちゃんもちゃーちゃん以外に黒い子がいます。どんな犬とも仲良くできるめいは、チェックイン前にチロルくんにちょっと手厳しい出迎えを受けてしまいましたが、大好きな猫ちゃんとのふれあいもできてよい経験ができました。 |
2月10日(水)
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朝起きると外はモノクロームの世界でした。雪がしんしんと降り、これ以上降り続くとここから出られなくなりそうでしたが、焦っても仕方ありません。まだ寝ている妻とめいを置いて、私だけそっと朝風呂へ。ここはお風呂まで長い廊下でつながっているのですが、そのまん中に黒い固まりがぽつんとあるのが見えました。それが黒猫ちゃんでした。この子もとても人懐っこく、私が近づいていくと体をすり寄せてきます。
お風呂は昨晩入った時よりも泉質が変わっている感じがしました。少し白濁した温泉はより温泉感が増して大好きです。湯船でしっかり体をほぐして目を覚まします。この温泉で朝風呂なんて、とても贅沢に思えました。
部屋に戻ると同時に妻も起き出し、めいのトイレのために着替え、思いっきり降っている雪の中を少しだけ散歩します。めいもわかっているようでさっさと用を済ませてすぐに撤収。一旦めいをまた部屋に戻し、もう一度朝食のためにロビーへ降りました。するとエントランス脇に大きなぬいぐるみのようなモコちゃんがいました。脇には雌阿寒岳の地震計測機器が入ったラックも置かれています。昨年一時期は警戒レベルがあがった雌阿寒岳。そのすぐ麓にこの雌阿寒温泉郷はあるのです。 |
朝食も正しい旅館スタイルで和食です。妻が納豆やきゅうりが苦手だと伝えていたので、私は納豆でしたが妻にはたらこが添えられていました。この心遣いに感謝です。朝からおひつのごはんを全部たいらげてしまいました。
食後、こちらの女将さんといろいろな話をしました。中でも先代犬やトレーニングの話をすると、とても犬に対してしっかりとした考えをお持ちなのが伝わってきました。ただ犬や猫を可愛がるだけでなく、病気などのケアの知識や、必要なトレーニング、人との共存するために必要な事、その中で生き生きと生活している犬や猫たち。この宿が温泉だけでなく、これまでよりもっと好きになりました。 |
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観光シーズンは他のお客さんには犬連れだとちょっとご迷惑になりそうなので、今回のようなオフシーズンにゆっくり訪れる私たちにとっては楽しみが増えました。またぜひ利用したいと思います。
なんとか出発する頃にはあれだけ降っていた雪もあがり、山深い名湯の宿に、めいと一緒に泊まれた事が単純に嬉しい時間でした。 |
犬連れ宿泊ができる宿だった所が、気がつくと禁止になっている例が極めてたくさんあります。ぜひこれからこちらの宿を利用される方は、犬連れ宿泊を続けていただくよう、マナーの遵守だけでなく、まわりが気持ちよい旅の時間を過ごせるよう、気配りをよろしくお願いいたします。 |
(2016/2/9〜10泊) (2016/4/8)(埼玉県、Yさん くーたら日記
Hill Breeze)
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