1月の中旬に、岡山市内からも交通の便の良い備後屋さんに大人2名と犬2匹でお世話になりました。 大正時代のモダンな雰囲気を醸しつつ、純和風なイメージを合わせ持ったお宿です。 絶対に1度は泊まってみたいとあこがれにも似た思いのあったお宿ですが、以前ネットから予約をした際には、あいにく予約は取れずに「いつかは!」と夢膨らませていたのです。 旅行に出るときはいつも、大きな本ですが全国の地図と一緒になってる便利なJAF出版の『ゆとり旅・愛犬といつも一緒』を車中に置いています。岡山辺りでもう1泊しようと思い立ち、ゆとり旅から電話番号を探し、「無理かもしれないな〜」と半ば諦めながらもかけてみて大成功でした。備後屋さんは当日ながら快く犬連れを受け入れて下さったのです。
備後屋さんは料亭として始められた宿ですので、何しろお料理が絶品です。 創業は大正3年とのこと、洗面所も館内も使い込まれた古さの中に当時からの繁栄が随所にうかがえます。庭園の樹木も、樹齢を感じさせるものからどれも見事に手入れされており、石畳の通路に点在している離れは、それぞれ趣が違います。 その日はラッキーなことに私達のみの貸し切りでしたが、離れ形式になっている他のお部屋の明かりもチェックイン時から付いていて、夕刻以降の足元を明るくしてくれていたのだと思います。 下駄で檜風呂まで歩きますが、下駄の石畳を踏む音が実に庭園とマッチして、なんとも風情があって良いものです。 紹介HPに写真付きで詳しく書いてありますが、各離れに名前が付けられており、犬達と高台まで階段を駆け登ると、そこは頂上でちょっとした広場があります。そこからは小船の係留された玉島港と、街並みを眺めることができます。 備後屋さんに着いてから、オーナーと着物のご夫人が迎えてくださいました。階段を昇り、石畳の通路を抜け一番奥の離れに到着です。お部屋に入ると花器にカサブランカが活けてあり、鮮やかなピンクとかぐわかしい香りに和みます。 暖房は効いているのですが「お寒いでしょう。」とわざわざストーブを運んできてくださいました。毎年犬連れのリピーターも多いとのことで、連泊の際にはお料理も各日別料理で楽しめるのだそうです。 夕飯の時には別の着物の女性が泊まる部屋とは別室に料理を運んでくださり、そこで犬達と一緒にいただきました。料理は格調高い会席膳です。瀬戸内海の四季折々の素材が、凝った器に並べられどれもが上品な味わいです。私達はスタンダードなコースで予約をしたのですが、ワン1匹につき\1,050の大人1人\13,500は充分にリーズナブルな料金でした。あんこう鍋や趣向を凝らした味をじっくりと堪能させていただきました。朝食もボリュームがあります。庭園を散歩してから檜風呂に入って、ゆっくりと朝食をいただくのも良いですね。檜風呂の広さは家庭サイズの7倍は軽くあるのではないでしょうか。パウダールームもとてもきれいです。2回入ったのですが2回とも湯気で写真に失敗し、どれも真っ白になってしまったので残念です。 パウダールームまでキャリーに入れて犬も連れて行くことができます。 犬専門宿ではないのに、犬連れに対してとても理解のある寛容な印象を持ちました。有り難いことですね。大切にしたいお宿です。 チェックアウトの際に、「施設内の上の方に犬が走れる場所があるよ。」と教えてくださったんですが、前日に充分満喫させていただいた場所でした…(汗)。何も聞かずに走り回らせてしまったのですが、他に泊り客が居るかどうかの確認をした方が良いと思います。確認を
ってしまい「もし他のお客様が突然犬に出くわし、びっくりしたら迷惑だったろうな。」と反省しました。 清潔で綺麗な館内の使い込まれた床や柱は黒光りしています。藁葺屋根の離れもあります。古いままの味わいのある宿は、今さらお部屋の洗面所のお水をお湯にしたり、トイレにウォシュレットを付けたりしない、単に便利さを追求するよりも、そのままの風情を味わいたい方向きのお宿だと思います。 檜風呂の棟のパウダールームで全てまかなえますし、朝からお風呂も丁度良く湧いております。 檜風呂からは各離れからも歩いて1分〜2分ですから、お風呂もお料理も満喫したい方はつい連泊したくなるでしょう。以前に利用した方には、申し出ていただければ別のお部屋やお料理を出してくださるそうです。 お部屋には縁側もありますし、のんびりと庭園を眺めながら過ごすのもお勧めです。春には庭園を彩るきれいな花々が、目を楽しませてくれるのでしょうね。 岡山の美観地区までは車でおよそ20分の距離です。竹久夢二記念館へは「犬はキャリー」で一緒に入れますし、お正月も元日以外は入館できるとのことです。岡山には『夢二郷土美術館』や『夢二の生家』、夢二の設計したアトリエをご子息が協力し復元した『少年山荘』などがあり、夢二の芸術の原点を堪能してみる旅プランも良いでしょうね。 オーナーが教えてくださいましたが、備後屋さんから車で5分もかからない場所に、良寛さんが修行をした円通寺もあります。 備後屋さんから見下ろす港町もなかなか良いのですが、円通寺からは遠く瀬戸大橋まで見渡せるとか。 国民休暇センターに車を停めて散歩できるとのことでしたが、途中に公園があり「ペット入園禁止」の看板をみつけ、あいにくの曇り空だったのもあり、景観も期待できそうになくすごすごと引き返してしまいました。 今回は慌しく、せっかくの岡山を観光することなく家路に着きましたが、備後屋さんのようなお宿は、そこでのんびりと丸1日、翌日は日中観光で又のんびりと2泊目、と連泊するのが至福のプランだと思います。侘寂好きな私にとって大満足の1日、特に犬連れでこのようなお宿に泊まれて最高に幸せでした。また是非うかがわせていただきたいと思います。 (2006/2/18)(静岡県、Mさん)
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